09読書日記21冊目 『刺青・秘密』谷崎潤一郎

刺青・秘密 (新潮文庫)

刺青・秘密 (新潮文庫)

谷崎は一昨年あたりに『痴人の愛』を読んで以来。『痴人の愛』よりも、こちらの方が耽美的で純度が高く感じた。というよりなにより、日本語が美しすぎる。『秘密』や『母を恋いうる記』の、一瞬の恍惚を取り逃がしてしまう感性は極度に芸術的である。もちろん『刺青』や『異端者の悲しみ』も良いが、特に『少年』の激烈なマゾヒズムは、読むものを怪しい快楽の世界へいざない、帰って来れなくしそうである。

『隈ない月の光が天地に照り渡っている。そうしてその月に照される程の者は、悉く死んでいる。ただ私だけが生きているのだ。私だけが生きて動いているのだ』

273p
総計7464p