肉体労働

肉体労働

彼女が詩をつくりなさい、と言ったので
わたしは午睡をやめ
裏庭に出た
納屋にあるシャベルを持ってきて
おごそかな気持ちで
昨日の雨に
軟らかくなった土を掘り返す


彼女が炊事をしているとき
春の陽ざしに
少し汗ばみ
肉体労働にも飽きたわたしは
どこかの家の犬が
盛りをつけたように鳴く
その声にも敏感だ


彼女が子作りをしているとき
わたしも子作りをしている
同じ運動を何度も繰り返し
途中でたばこを吸いたくもなるが
桜の散るのの早いことに
気づいているから
肉体を酷使するのをやめない


そのときようやく片隅に
落ちている言葉を
手に取ってみたりする
沈黙があり
幾度かの合掌がある
尼僧のように頭を垂れる


彼女が詩をつくりなさい、と言ったので
わたしは愛について考える
体は疲労して
どこもかしこもが痛い
大切に取り出してきた言葉を
くちずさもうとして
彼女のいびきがそれをさえぎった