09読書日記46冊目 『私が夢見た「優」』あんどう蒼

私が夢見た「優」

私が夢見た「優」

読書会で読む本。ああ、この人は本当に<女>だ、と思った。アファーマティブ・アクションに向かうことでもなく、ただ自分が好きな人が、自分の好きな人だと肯定する力、そしてとにかく好きだった人を否定しない優しさ、それにつきる。


自分が好きだった人を、人が好きではなくなるとき、そのときは、自分が好きだった人が嫌いな人になってしまうのではなくて、「どうでもよくなる」ときだと思う。そのときがくるまで、好きな人は自分の過去であるし、自分の未来である。その人なしでは考えられない時間の連鎖が、ぱったりと断ち切られるなんていうことはない。その鎖は長く時間をかけて錆びて朽ちていくだけでしかない。


僕はこの主人公に哀れみも同情もしない。ただ、強さを感じて、うなだれてしまう。僕はどうしても好きだった人を好きだった時間を、偽りの言葉で、「アノトキノオレハドウニカシテイタ」というような虚偽のレトリックで、自分を何とか正当化しようとするタイプの人間だから。


250p
総計14571p