09読書日記51冊目 『自由主義の再検討』藤原保信

自由主義の再検討 (岩波新書)

自由主義の再検討 (岩波新書)

自由主義リベラリズム)については、ここ50年の間に様々な立場から批判がなされてきた。その自由主義を原初から思想史的に解説し、さらにマルクスからの批判を経て、ロールズらの内的突破の試みや、リバタリアニズムからの自由主義の徹底、そして最後にコミュニタリアニズムを参照することで、自由主義を「再検討」している。


自由主義が、その強みとしてきたことは、価値(善)よりも権利を、という私的自由の確立であった。しかしそもそも私的自由が私的自律の可能であった人々にのみ許されるようなものであった以上、近代以降その私的自律の枠組みが崩壊し、なおも「善については不問、権利のみを称揚」する自由主義が「再検討」されるのも当然であろう。グローバリゼーションの進展とともに、一つには、多様な文化が現前しているという問題、二つには環境問題などが喫緊の課題である、という認識がある。僕自身としては、多文化主義(あるいは価値相対主義)にしろ、環境問題(あるいはそこに経済的な問題を含めてもいいかもしれない)は、私的自由に基づいた好意の結果生じてきている、と感じている。私的自由は、それじたい抗いがたい魅力を保ってはいるが、いっぽうで公的自由というものが欠如したそれには、悪弊が存在するであろう。


200p
総計16395p