久しぶりに読む
山田詠美。短編が三つ。どれも性的・肉体的な描写と、ハードボイルドでありながらウェッティな女性を中心に物語が構成されている。『
ジェシーの背骨』は最近読んだ小説の中でずば抜けてよかった。ここでは男女というよりも、子供・女という構図がとられてはいるが、それも一種の男女の構図にほかならない。
山田詠美が描く男女関係と言うのは、肉体を通じて直観的に理解されると同時に絶対に同一化できない二人の関係なのである。それはお互いがお互いの役割を理解し、どちらがどちらにも寄りかからずに、紳氏・淑女として性愛にいそしむ関係性なのだ。急いで付け加えておけば『
ジェシーの背骨』は、子供=
ジェシーと主人公のココが肉体関係を持つと言うような倒錯小説では、もちろんない。ココが
ジェシーを、彼女を淑女として
エスコートしもてなすことのできる紳氏だとして受け入れるとき、それは子供と大人と言う関係ではなく、対等で、
浅田彰の言葉を借りれば「
モラリスト」としての男女関係に落ち着くのである。
302p
総計30881p