'10読書日記8冊目 『身体/生命』市野川容孝

身体/生命 (思考のフロンティア)

身体/生命 (思考のフロンティア)

129p
総計2065p
昨今の脳死の議論にきっかけを見いだしながら、西欧医学思想の源流を探る試み。フーコーの生権力の議論で引き合いに出された、ビシャなどを手繰っていくことで、人間の生と死をめぐって西欧がいかに思考してきたかを抉り出している。近代啓蒙思想を考えるとき、フーコーが示唆したように、そこには狂気(排除)の機制をもたらす構造があったということは忘れられてはならない。そして、人間の死を定義することが、ますます恣意的に為されうる可能性がある現代において(アガンベンホモ・サケルを持ち出すまでもなく)、隠喩としてではなくて具体的な議論を通じて、その分水嶺を定めていかねばならない。

僕としては、同じ著者の『社会』のほうが興味深く読めた。生命倫理についての本も読んでみたい。