'10読書日記28冊目 『ピストルズ』阿部和重

ピストルズ

ピストルズ

もはや、阿部和重むっちゃ好きでしかないので、何とも言えず、今回もよりぶっ飛んでて、しかもそれでいて現実との密着感が、一読者としての感慨に迫る、という風なのである。しかし、なんという壮大な劇画なのであろうか。ファンタジー的でありながら、それを支えているのは絶えざる肉感的苦痛なのであって、それ以上でもそれ以下でもない。日本戦後思想史を思い浮かべながら、菖蒲家の父親を見ていたのだが、では、その継承者である少女みずきは、日本の未来を照らしてくれるものなのだろうか、しかしそれはあからさまな劇薬にすぎないのだ。だが、なにか希望を感じさせるような、そのような気もするが、そのような希望も、実質的にはベニテングダケのバッドトリップの所業なのかもしれない。
667p
総計7466p