6-6

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朝方ハワード・ホークス『赤い河』。昔の西部劇の力強さを感じる。台風は結局来ない。拍子抜け。「嵐が来る」というドリカムの昔のマイナー(?)な曲まで思い出していたのに。昔から嵐の前にはわくわくしていた――と書いたところで、本当に昔から嵐が好きだったのかと不安になる。大学生のとき、大雨の中びしょぬれになりながらジンだかウイスキーだかのボトルをあおったことがあった。そのとき一緒にいた人が嵐や台風にわくわくしたと言ったのに共感し、そのとき初めてそう感じたのではなかったか。記憶は捏造され原初は偽られる。モスバーガーで勉強。
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ゼミに出てMさんの発表を聞く。新自由主義についてのことなど。
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自転車で学校。昼間は晴れていて暑かったのに夜は一転寒いくらい。13℃やったらしい。国Ⅰ人事院面接終わりのあさひたんと指導教官の授業。人が多い。生協でご飯。修士論文締め切りまで200日を切ったことを知り愕然かつ失禁かつ脱糞。国会はこの危機的状況のなかで、政争に明け暮れている。あほ。
6-1
Sと『マイ・バック・ページ』を見に行く。新宿ピカデリー。平日だが映画の日なので大混雑。69年の「政治の季節」とそれが連合赤軍や映画のような矮小で見苦しい結末に終わったこと、そしてそれを生きてきた人たち(団塊の世代)がバブルを支えたということ、大雑把な言い方だが、彼らのやってきたことは日本を造りそしてまた破壊した――しかも夢も理想もなくなるまで、というのが僕の見方だ。映画の最後、妻夫木演じる若手の記者は「どうして信じちゃったんだろう、あんな奴」と自問し、「信じたかったのかな」と泣きそうになりながら照れ笑いする。信じたものが糞だとわかったとき、人はどうしようもなく居たたまれない気持ちになる。だが、「信じる」という行為は、本当のところ、自己の「信じたかった」理想の投影である。それゆえ、断じて言わねばならないが、信じたものが糞だとしても信じたかったものは決して糞ではない。信じたものが糞であったとしても、信じたかったものそのものを否定してはならない。そこにある理想のポテンシャルを――いくら現実がその理想を否定しているように見えても――保ち続けなければならない。映画のあと、キリンシティでビールをたくさん。S君と親密に話すのは初めてで、色んな話をした。ホモフォビアは自分のセクシャリティを承認できず抑圧しているがゆえに、他者にまで差別的な言語を向け攻撃するということとか(『ミルク』を思い出す)。どんなタイプが好きか教えてくれと言われましても。二人で9000円くらい飲んでしまう。
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不信任案が可決されれば解散総選挙もありえる、などという空虚なくせに悲惨な事態になるかもしれないと朝のニュース。仕方無しにNHK国会中継を見ていると、自民党幹事長の演説やら何やらこれまた空虚でレトリックしかない意味のないもので、いよいよ採決になったのだが、結局不信任案は否決されてしまう。丸一日、国会で空虚すぎる大騒ぎを演じたこの国の政治家たち480人は何をしているのか。全員解雇してやるから原子力発電所で働け。バイト。高校生がかわゆい。駅まで一緒に歩く。
3
最近よく思いだすことは、ローザ・ルクセンブルクの言葉。革命は時期尚早でしか起こりえない。革命の好機を待っていてはいつまでたっても革命は始まらない。革命は、起こすという決意によってしかおきえない。何かをやるなら今しかなく、やりたいことを待つ時間などは必要ない。どうしてこのようなことを思うのだろうか。わからないけれど、何かに私もせっつかれているのだろう。昼から買い物。ナノユニでTシャツを買い、ジャーナルでトートバッグを買う。昨日までの寒さは何かというくらい暑い。バイト。東大志望の受験生と現代文の勉強がてらバーリン『自由論』を読んでいる。
4
バイト。高2の授業で、池田晶子の文章を。デカルトの根源的懐疑と信仰の話。池田晶子があまり好きではないし説明もあまり上手くなかった。反省。のあと新宿から夜行バス。乗る前に焼き鳥でビールを飲んだら、意外に眠れた。
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朝岸和田に着く。父母と原発の話やら何やら。橋下徹が糞であるということも。昼くらいにアウトレット。車を一台売っていて、すっかりガレージが寂しい。晩御飯はステーキ、イサキの塩焼き、サラダ、空豆、じゃこなす。実家のご飯最高。ビールを少し飲んで。
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朝鹿児島の祖母に電話。大分弱っている。先週会いにいけなかったことが悔やまれる。何とか持ちこたえて欲しい。あと二ヶ月で80歳になる。だらだらと寝そべりながら丸山真男を読む。実家のパソコンを見ていたら、『テヘランでロリータを読む』の引用を書き留めたファイルがあった。ヘンリー・ジェームズの以下の言葉が素晴らしい。

Feel, feel, I say-feel for all you're worth, and even if it half kills you, for that is the only way to live, especially to live at this terrible pressure, and the only way to honour and celebrate these admirable beings who are our pride and our inspiration.

感じなさい、感じなさいーたとえ胸が張り裂けるほど苦しくても、精一杯感じなさい。生きるには、とりわけこの恐るべき重圧のときに生きるには、それしか道はありません。私たちの誇りであり、私たちに励ましをあたえてくれるあの素晴らしい人びとを尊び、たたえるにはそうするしかないのです。