8-19

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朝板橋から長野県志賀高原へ。バイトしている塾の勉強合宿の付き添い。志賀高原へは4時間くらいで着く。お昼ごはんが豪華で満足。授業をする時間と、自習監督をする時間があり、最初は中2の国語の授業。夜も22時まで学習時間が設けられている。夜のミーティングで何か話せということで、「本当のこと」とか井戸掘りの話をしてアジテーション。生徒の感想のなかに「一つの穴を掘り続けていきます」と書いてあって感動した。寝る前に同室の英文学を専攻しているドクターの先生に、研究の話を聞かせてもらう。
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朝6:30からラジオ体操というヤバいスケジューリング。志賀高原は涼しいというよりもちょっと寒いほど。ラジオ体操なんて何年ぶりだろうか。朝一8時から高2の国語。生徒も先生もくそほど眠いけれどなんとかこなす。昼以降は自習監督で、交代で眠る。昼には周辺を散策。雪のないゲレンデを登るのは何か不思議な感じ。高3同士で仲良くなっていって、傍から見ていても楽しそう。それにしても一日10時間ほどよく勉強している。
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3日目は、夜に花火大会がある。キャンプファイアーまでつくって、すっかりみんなはしゃぎまわり、高校生たちの元気さに圧倒され、自分の「若くなさ」を感じてしんみり。打ち上げ花火を手に持って暴れまわって、高校最後の夏を楽しんでいる様子。夜のミーティングで、同僚のO先生が話したことが印象深い。長い合宿も最終日。夜には講師陣で集まっていろいろと話す。合宿中アルコールは禁止されていて、かなりつらかった。
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朝小雨が降ってラジオ体操は中止。小6の国語の授業を担当。筑駒の入試問題を解いたあと、せっかくなので合宿の感想作文を書いてもらう。小6の子が一人だけ、あとはほとんど高校生という中で、よく頑張っていたし、楽しんでくれたようで嬉しい。僕の半分しか生きていない少年もこれから大人になっていくのだな。昼食後に志賀高原を出発。夕方板橋に到着。東京も雨降りのあとで涼しい。打ち上げでおいしい焼肉屋さんに連れていってもらう。塾長のおごりで美味しい肉を食べまくる。とはいえなによりビールが美味しすぎました。渇望感って大事。帰り道にRと電話。身体はつかれていて、ひどい眠気が。眠いときは誰かに抱きついてぐーすーしたくなる。スカイプで少し話す。そちらはそちらで頑張っているのだね。hello, how low?
バスの中でK先生とUKロック談義とか、詩談義に花を咲かせる。教えてもらった中原中也(あんまりポエムすぎてちょっと苦手なところがあったのだが(例えば「サーカス」とか「汚れちまった悲しみに」とか))の詩。そして、思い出させられた谷川俊太郎の「葉書」。

血を吐くやうな 倦(もの)うさ、たゆけさ
今日の日も畑に陽は照り、麦に陽は照り
睡るがやうな悲しさに、み空をとほく
血を吐くやうな倦うさ、たゆけさ

空は燃え、畑はつづき
雲浮び、眩しく光り
今日の日も陽は炎ゆる、地は睡る
血を吐くやうなせつなさに。

嵐のやうな心の歴史は
終焉つてしまつたもののやうに
そこから繰れる一つの緒(いとぐち)もないもののやうに
燃ゆる日の彼方に睡る。

私は残る、亡骸として――
血を吐くやうなせつなさかなしさ。

葉書を書くよ
葉書には元気ですなどと書いてあるが
正確に言うとちょっと違うんだな
元気じゃないと書くのも不正確で

真相はつまりその中間
言いかえれば普通なんだがそれが曲者さ
普通ってのは真綿みたいな絶望の大量と
鉛みたいな希望の微量とが釣合ってる状態で
たとえば日曜日の動物園に似てるんだ
猿と人間でいっぱいの

とにかく葉書を書くよ
葉書には元気ですと書くよ
コーラを飲んでから
きみとぼくとどっちが旅に出てるのか
それもよくわからなくなってるけど

草々