'11読書日記59冊目 『現代カント研究6 自由と行為』

自由と行為 (現代カント研究)

自由と行為 (現代カント研究)

203p
総計18028p
晃洋書房から出版されている「カント研究会」による論文集。本著はカントにおける自由論を扱ったものを中心に編まれている。編者の久呉高之さんの前書きによれば、第六巻の統一テーマ「自由と行為」は、英米分析哲学とカント研究が切り結ぶような意図を持って付けられたものらしいのだが、分析哲学をカントから論じた論文は久呉さんの「他行為可能性と自由」のみであった。なかなかそれ自体では面白そうなテーマではあるが、カント自体の理解が難しく、困難な課題なのだろう。久呉さんの論文も、H.G.フランクフルト(Frankfurt)の"Alternate Possibilities and Moral Responsibility"を紹介することに紙面が大幅に割かれ、それとカントとの直接対決はなされていないように思われる。カントはフランクフルトが持ち出す心理的自由を、実践的(あるいは超越論的)自由とはみなさなかった。人が心理的に自由だ(内面には自由がある)と感じていたとしても、心的現象はやはり時間的に先行する項に規定されているのであり、因果連関からは逃れがたいのである。
個人的に興味深かったのは、H.E.Allisonのカント論を検討した湯浅正彦「道徳性と自由の正当化」、ライプニッツ流のオプティミズムとカントの関連を追った水野美穂「カントと弁神論」。