'11読書日記73冊目 『若きカントの思想形成』浜田義文

若きカントの思想形成 (1967年)

若きカントの思想形成 (1967年)

421p
総計22385p
我が国の「若きカントの思想形成」の本では、今でも版を重ねている坂部恵『理性の不安』が有名だが、こちらも名著。坂部本が『視霊者の夢』をクローズアップし、カントにおける理性の深淵を取り上げているのに対し、浜田本はオーソドックスにかつ丁寧に前批判期の思想形成を見ていく。特に、第二章・第三章・第四章では「天界の一般自然史と理論」や「神の存在証明の唯一可能な証明根拠」が丁寧に、思想的連関を追いながら扱われていて勉強になる。伝記的要素も散りばめられており読み飽きない。ただ、こういう重要でかつ基本的な本が絶版になっていて悲しいのは世の常である。ちくま文庫あたりに入れられたらいいのにな。