'11読書日記83冊目 『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』東浩紀

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

262p
総計24758p
非常に面白く読んだ。統治に一般意志をいかに反映させるか、これに尽きる。本書の基本的なアイデアはルソー『社会契約論』の不可解な一節をベタに解釈することにある。

人民が十分に情報を持って熟慮するとき、もし市民がお互いに意志を少しも伝えあわないなら、僅かな相違がたくさん集まって、常に一般意志が結果し、その決議は常によいものであるだろう。( Si, quand le peuple suffisamment informé délibère, les citoyens n'avaient aucune communication entre eux, du grand nombre de petites différences résulterait toujours la volonté générale, et la délibération serait toujours bonne)

「もし市民がお互いの意志を少しも伝えあわないなら」あるいは「もし市民が少しもコミュニケーションしないなら」。この部分は伝統的なルソー解釈としてはどうなってきたのだろう。とにかく、筆者はこれで基本的なアイデアを突っ走る。
本書は、統治論である。だが、統治論だけでは政治は終わらないことは確かで、政治のイメージの一新は部分的にとどまるだろう。というのも、やはり排除や分断の問題は根強く残るように思われるからだ。とはいえ、民意と政治の乖離というような問題圏に関してはうまく本書の議論はアタックできるのではないか。憲法や人権の問題に関しては、一般意志2.0のアイデアは少々危ういように思われる。最後のあたりでローティの共感に触れる必要はむしろなかった。ウェブから集約される一般意志=無意識が、他者への共感を欠いていることだって往々にしてある(しむしろそんな共感が働かないことこそ問題であろう)。