'12読書日記1冊目 『暇と退屈の倫理学』國分功一郎

暇と退屈の倫理学

暇と退屈の倫理学

362p
総計362p
わくわくとした期待を持って読み始めたのだったが、消費社会論のあたりで違和感を感じた。が、ハイデガーの話(『形而上学の根本諸概念』)になると再び面白くなってくる。しかし、それほどの熱気を持って読んだわけではない。この本に書かれていたことと似たようなことは、多かれ少なかれ考えたことがあった気がしたからだ。しかし、〈退屈〉ということを哲学的に正面きって論じようという潔さと着眼点の面白さは、ずば抜けている。〈暇と退屈の倫理学〉は、おそらく情熱的な恋愛とそのあとに来るかもしれない倦怠感をも射程に含むことができるだろう。あるいは忘却と退屈。そうしたことを考えさせるフックにもなるような気がする。
いくつか疑問もある。環世界移動能力の程度の差によって人間と動物を区別する議論では、例えば障害を持った人たちはどう位置づけられるのか。病室でただただ仰臥している人は、環世界移動能力が高くないのに退屈である。あるいは、暇がなく退屈している低所得の工場労働者のような人々は、いかにして退屈から抜け出せるのか。彼らに(時間的・金銭的に)可能な楽しむ訓練は、つまるところ、仕事を楽しむこと以外ないのではないか。