'12読書日記34冊目 『スピノザの世界』上野修

スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)

スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)

193p
総計9342p
スピノザかっけー。ヘーゲルとの繋がりを感じる。
筆者の語り口もすがすがしい。「精神」の把握は難しいが、

スピノザの話についていくためには、何か精神のようなものがいて考えている、というイメージから脱却しなければならない。精神なんか無くても、ただ端的に、考えがある、観念がある、という雰囲気で臨まねばならない。ちょっと不安になるが、しかし問題は「真なる観念」そのものであって、誰の持っている観念かということはさしあたりどうでもよいのである。

その国家観・政治観も興味深い。フーコーの統治性の議論を強く思い出した。

国家の力量は、ねたみと憎しみに傾きやすい人間たちを巧妙に協力させ、誰もがその増幅された力を恐れ・かつ期待するほかなくなるようにさせるある種の「術策」にかかっているというのである。同じく『国家論』から。

思うに人々を恐れによって導くことしか意図しない国家は過失のないことはありえようが、進んで有徳の国家とはなりえない。人間というものは、自分は導かれているのでなくて自分の意向・自分の自由決定に従って生きているのであると思いうるようなふうに導かれなくてはならない。