'12読書日記41冊目 『学問』山田詠美

学問 (新潮文庫)

学問 (新潮文庫)

369p
総計11338p
全体のトーンに一貫性がなく、コメディカルなタッチのところもあれば、性に対して真面目に向きあおうとするところもある。仁美の心太への感情が曖昧であり両義なもので、それは狭義の(つまり恋愛小説的な)愛とは異なったものでありえるかもしれない、という主題は良いにしても、その主題を上手くさばききれていない感じがする。
例えば、以下の文章を、いったいどういう気持ちで読めばいいのか。それは例えば『僕は勉強ができない』の軽やかさとして読まれるべきなのだとしたら、全体のトーンから逸脱してしまっている。

自慰などという情けない言葉は、死んでも使いたくありません。かと言って、男子が軽々しく使うオナニーという呼び方もどうかとおもいます。…素子の話によると、旧約聖書に登場するオナンという人物が語源だそうです。そして、その人は、後に神によって殺されてしまうのだとか。下世話な話ではしゃぐために、使う用語ではないように思えます。それでは、彼らは、それを何と呼べば良いのか。さあ。やはり「しこしこ」あたりが無難なところではないでしょうか。