'12読書日記55冊目 『カソウスキの行方』津村記久子

カソウスキの行方 (講談社文庫)

カソウスキの行方 (講談社文庫)

179p
総計15046p
「カソウスキ」ってロシア人の名前じゃないですよ。仮想・好き、ということです。これだけでもう読みたい感じがムズムズと湧いてきます。津村記久子の描く小説は、それがほとんど恋愛小説でありながらも、恋愛は完遂されず、つねにどこか「不具」をそなえた恋愛の周囲をグルグルします。「カソウスキの行方」は、左遷されたOLがあまりの退屈さに、職場の全然恋愛対象ではない男性社員を「仮想で好きに」なろうとする小説です。妙にリアルな女性の独白と、それと相反するように馬鹿馬鹿しい妄想が共存して不思議な味わいを醸し出し、さらには時に鋭い言明が読者を突き刺す――。津村記久子は最近僕が知った優れた作家の一人になりました。