'12読書日記61冊目 『分析哲学講義』青山拓央

分析哲学講義 (ちくま新書)

分析哲学講義 (ちくま新書)

270p
総計16854p
やっぱり主色の面白さは最終講義「時間と自由」。叙述も平易でわかりやすいが、講義が進むに連れて難易度がまして行く構成に(期せずして?)なっているのも良い。この手の議論に親しみのない人なら講義7「可能世界と形而上学」、講義8「心の哲学の展望」、講義9「時間と自由」あたりが山場になりそう。だがしかし、この最後の三つの講義から格段にワクワクする感じが与えられるのも事実だろう。「時間と自由」では「今」の哲学が繰り広げられ、そこに膨大な荒野の存在が告げられる。問題の核心は、次の事実にある。

「今を観察する」という表現には、根本的な奇妙さがあります。私は過去や未来を直接観察することはできず、今の世界しか観察することはできませんが〔…〕、しかし、今そのものを観察することはありません。私は、今において世界を観察するのであり、世界において今を観察するのではないからです。(強調は引用者)

ここからどういうふうな哲学的議論が(そして科学における議論も含めて)展開されていくのか、僕は容易にまとめられないが、とにかくスリルがある。とりわけ、決断と可能性の分岐の問題が「今」から考えられるというところ、政治思想的に接合できるような気もした。