'12読書日記65冊目 『権力の心的な生』ジュディス・バトラー

権力の心的な生―主体化=服従化に関する諸理論 (暴力論叢書)

権力の心的な生―主体化=服従化に関する諸理論 (暴力論叢書)

277p
総計17733p
フーコーが主体を生産する法について語ったのに対して、バトラーは、では法がいかに主体を生産するのか、その心的なメカニズムとは何かを探求しようとする。フーコー精神分析を避けたのに対して、バトラーはその知見、とりわけフロイトの良心と喪・メランコリーの理論を積極的に参照する。さらに、フーコーフロイトを媒介する時にバトラーが持ち出すのが、アルチュセールの振り向き理論である。かなり抽象的な話で、噛み砕きながら読んでいくのに苦労する。おそらく訳者の佐藤さんのUTCPであった発表を聞いていなかったら全然ついていくことができなかったに違いない。
にしても、権力が主体を創り上げる心的なメカニズムを問うという作業は、いかなるところへつながっていくのだろうか・・・。各章の繋がりがややわかりにくく、序章の議論が一貫されているようで、そうでもない感じもする。ヘーゲルの主人と下僕の話を、ニーチェの疚しい良心の議論につなげる読解や、フロイトの「喪とメランコリー」の議論を再解釈した終章は興味深く読めた。