'12読書日記68冊目 Kant's 'Idea for a Universal History with a Cosmopolitan Aim': A Critical Guide, Amélie Rorty, James Schmidt (ed.)

Kant's 'Idea for a Universal History with a Cosmopolitan Aim: A Critical Guide (Cambridge Critical Guides)

Kant's 'Idea for a Universal History with a Cosmopolitan Aim: A Critical Guide (Cambridge Critical Guides)

257p
総計18760p
2009年に出版された、カント「世界市民的見地における普遍史の理念」についての論集である。「普遍史の理念」は導入部に加えて9つの命題から構成されているが、この論集ではおおよそそれぞれの命題の内容順に論文が並べられている。で、この論集、したの目次を見てもらえば分かる通り、寄稿者が豪華なんだよねー。ヘンリー・アリソン(Henry Allison)、マンフレート・キューン(Manfred Kuehn)、ジェローム・シュナイウィンド(Jerome Schneewind)、アレン・ウッド(Allen Wood)、ポール・ガイヤー(Paul Guyer)など。編者はリチャード・ローティの奥さんがつとめている。
それぞれの論者の強調の違い、着目点の違いがあって面白い。「普遍史の理念」はごくごく短い論文なんだけれど、いろいろ厄介な問題をはらんでいるのだということが分かる。そもそも人類史が「自然の意図」に導かれて動いていく、ということからしても、カントの一般的な批判哲学の枠組みと食い違う。そうした理論的関心を置いておいても、道徳哲学、政治哲学がこの小論に結集していて、他のカントの著作を参照しながら様々な議論が展開できるのだろう。かくいう僕もそういう路線で修論を書いたのだけれど。注目すべき議論としては、アレン・ウッドとポール・ガイヤー、それからパウライン・クラインゲルトのもの。ウッドとゴイヤーは「普遍史の理念」を(特に有名な「曲がった木材」を中心に)根源悪の議論と絡めて論じている。前者が「普遍史の理念」を根源悪の社会的・歴史的説明とみなすのに対して、後者は「曲がった木材」問題、つまり根源悪問題を統治者の改革を道徳的に要請するものとして読み解いている(道徳的政治家)。クラインゲルトは「普遍史の理念」と「永遠平和のために」の間の「世界政府」の理論的ズレの問題を指摘した上で、「普遍史の理念」の議論が、『実践理性批判』の最高善へと漸近していく様子を描いているとしている。僕は、この後者の議論があまり好きではないのだが、クラインゲルトの議論は着実で勉強になる(あまり面白みはないけれど)。

Introduction: history as philosophy (Amélie Rorty and James Schmidt)
Idea for a Universal History with a Cosmopolitan Aim (Immanuel Kant, Paul Guyer (trans.))
1. Teleology and history in Kant (Henry E. Allison)
2. The purposive development of human capacities (Karl Ameriks)
3. Reason as a species characteristic (Manfred Kuehn)
4. Good out of evil: Kant and the idea of unsocial sociability (Jerome Schneewind)
5. The unsociable sociability of human nature (Allen Wood)
6. The crooked timber of mankind (Paul Guyer)
7. A habitat for humanity (Barbara Herman)
8. Cosmopolitanism and the final end of history (Pauline Kleingeld)
9. The hidden plan of nature (Eckart Förster)
10. Providence as progress: Kant's variations on a tale of origins (Genevieve Lloyd)
11. Norms, facts, and the philosophy of history (Terry Pinkard)
12. Philosophy helps history (Rüdiger Bittner)
Bibliography
Index of names and works.

ところで、この論集は、Cambridge Critical Guideシリーズの一冊なのだが、このシリーズはなかなかおもしろそう。