'12読書日記72冊目 『ルソー・コレクション 文明』

ルソー・コレクション 文明 (白水iクラシックス)

ルソー・コレクション 文明 (白水iクラシックス)

325p
総計20061p
ルソーが百科全書に書いた「政治経済論(統治論)」や戦争論関係の断片、そしてヴォルテールへの手紙が収められている。「文明」というタイトルで集められるのはやや苦しいが、どの論文も非常に面白い。
ルソーは、ECONOMIEという言葉が、もともと家を意味するオイコスと、法を意味するノモスというギリシャ語から由来するものであり、「家族全体の共同利益のための、賢明で法にかなった一家の統治」を意味すると言う。そしてこの言葉が、今日に至るまで次第に「国家という大家族の統治」という意味でも用いられていると指摘し、これを家族統治と区別して、全国統治(économie générale)あるいは国家経済(économie politique)と定義し、その統治としての「経済」とはいかなるものかを追求するのである。
そして、「合法的または人民的な統治、いいかえれば人民の利益を目的とする統治」の格率を3点挙げている。

(1)一般意志に従って統治を行うこと。そしてそれは正義と自由を保証する法のもとで、つまりは一般意志の具現化である法のもとで統治を行うことである。「法の力は、法の執行者の厳格さよりも法事態の賢明さに遥かに多く依存しており、公共の意志はそれを命じた理性から最大の力を引き出すものである。」
(2)一般意志が実現されるためには、すべての特殊意志を結集し、それを徳によって一般意志へと一致させなければならない。そしてその徳は祖国愛によって可能になるが、その祖国愛は人々が行政へと参加し市民として作り上げられることによって可能になる。
(3)統治は公共の必要を満たさねばならず、市民の生存に配慮せねばならない。