'12読書日記83冊目 『社会を変えるには』小熊英二

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

517p
総計24038p
「社会を変える」とはそもそもなんなのか、何がどうなれば社会は変わったことになるのか。そういうようなところから、平易な語り口で議論が始まっていく。現代社会の問題とはなにか、それは戦後のどのような歴史の中で作られてきたのか。社会運動史の研究者でもある筆者は、これまでの日本の社会運動から「社会を変える」ということに切り込んでいく。スリリングではない。堅実である。胸がすく思いもしない。まともである。それは、いい意味においてそうなのだと思う。
議論のベースは、特に目新しいわけではなく、ギデンズやベックの「再帰性」である。かと思えば、民主主義についての思想史を追った部分もある。新書なのに大著になるわけだ。思想史パートよりも具体的な記述の方が読んでいて重みを持つように思う。
あやしげにかんじるのは、「弁証法」を用いて「近代のなかから近代をこえる」ということが、本書の基調をなしているということである。弁証法。全体性。