'12読書日記92冊目 『西瓜糖の日々』リチャード・ブローディガン

西瓜糖の日々 (河出文庫)

西瓜糖の日々 (河出文庫)

209p
総計28241p
年明けに久しぶりの面々で読書会をすることになり、そのときに読む本としてこれを挙げた。期せずしてブコウスキーに続けてアメリカの作家を読んだのだが、ブコウスキーが下卑た野蛮な生活の中にペーソスを練り上げていくのに対して、こちらはもっと詩的で穏やか、訳者の言葉を使えば過剰さの欠如のなかに、人の感情の根本的ななにかが表現されているようだ。
iDEATHという架空のコミューンでの生活。語り主の名は明かされず、一人称iの死がコミューンの名前である。すべてのものが西瓜糖という砂糖で作られたメルヘンの世界。しかし、その世界には暗く冷たい感情も底流しており、事実、悲惨な情景も描かれる。世界の均衡はぎりぎり保たれているようにも感じる。