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夕方前、知らない電話があって、出てみると彼女のお母さんからの電話。彼女が死んだ、14日に、と。
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存在忘却。彼女の死を知ったというのに、僕には途方もなく遠くのことに感じられて、それで存在忘却。他人の死を死ぬことはできない。彼女が生前僕に最後に送ったメールは、怒りに満ちたもので、そのような別れ方をしたあと連絡もないまま半年が経って、僕にもう何も言うことはないまま死んでしまった。遠くのことで未だ信じられない、と思っていたのに、急速に彼女の喋り方やこの部屋で何度か過ごした思い出などが蘇り、どうしようもない。
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存在忘却
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存在忘却
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どんよりとした気分。陰鬱。活字が目に入ってこない。某君と見に行くブルーノートを予約したり。仕方ないので下北沢に行き勉強、と思ったがやはり陰気な心持ちは変わらずに、入ったカフェでふとした拍子にかかったフィッシュマンズの茫洋とした音楽が死んだ彼女を思い出させて、撃たれる。滅入る。活字は目に入ってこない。途方に暮れて煙草ばかりをふかして何とかやり過ごそうとする。カバンに入っていたオースターの本を読むと、いっそうダウンしそうだが、こういうときは徹底してダウナーであったほうがいいと、経験が教える。そして読んで、ダウナーになる。呆然としたまま下北沢の雑踏をウロウロして(二周くらい同じ所を歩きまわり)、自分の最寄り駅に帰る。なにか力のつくものが食べたくて、前から行こうと思っていたとんかつ屋へ行く。カツ丼。瓶ビール。まだしぶとく溶けきらない、踏みにじられて薄汚れた雪が、道端に固められていて、むやみやたらと蹴飛ばして帰る。音楽を聞く気にもならず、さりとて何をするわけではなく、ワインを飲みつづける。愛していない人と一生一緒にいるなどということは途方もなく悲しいことだ、などと思ってワインを飲んでいる。
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久しぶりにゼミ。昨晩痛飲したので頭痛。kmt君の修論のお披露目発表会。ジジェクハイデガーラカンと色々話が及んで愉快であった(kmt君は否定性を存在論的に議論したかったみたいだけれど、政治における否定性というやや外的適用の話になってちょっと不満気)。しかし40万字はすごい。のあと図書館で資料を物色。のあと渋谷のタリーズで勉強。終わって外に出ると小雨。夜には雪がふると言っていたけれどどうか。テレビを見た。