'13読書日記4冊目 『ヒュームの哲学的政治学』ダンカン・フォーブズ

ヒュームの哲学的政治学

ヒュームの哲学的政治学

464p
総計1509p
思想史研究とはかくあるべきか、という瞠目すべき書物。ポーコックやスキナーらが方法論的に意義付けたコンテクスト主義による思想史研究、と言ってもいい。つまり、本書において掲げられるのは、ヒュームを思想史的に理解するためには、ヒューム以前・同時代の著作の思想的ヘゲモニーを明らかにした上で、その異同を見極めねばならない、という立場である。実際、第一章はヒュームと同時代かそれより前の自然法論が詳述され、それとヒュームの関係を見定め、自然法論-抵抗権論とヒュームがどのように隔たっており、あるいはヒュームがそれらと同様の議論をしていたとして、その真の意図はどこにあるのかを見定めようとする。このように18世紀イングランドスコットランド)のコンテクストを明らかにした上で、ヒュームのオリジナリティ、ヒュームの政治・社会思想が解明されるのである。フォーブズの命題は、一言で言えば、懐疑的・科学的ウィッグ主義としてのヒュームである。既存のウィッグイデオロギーを自身の懐疑主義的・経験主義的哲学の立場から批判しつつ、なお名誉革命体制を擁護するヒュームが、遺憾なく描き出されている。コンテクスト主義を取る以上、やや細かい記述が続き、フォローするためにはイングランド史の知識が多少必要になるが、今の時代、ググったりすればそのようなハードルは難なく乗り越えられるのである。本書のような研究をしてみたい、と思う一方、その労の多さに愕然とするのも事実・・・。