'13読書日記21冊目 『人間機械論』ド・ラメトリ

人間機械論 (岩波文庫 青 620-1)

人間機械論 (岩波文庫 青 620-1)

ラ・メトリはフリードリヒ大王のサンスーシ宮殿に一時期滞在していた。カントの『啓蒙とは何か』の最後に、統治が人間を機械以上に扱うようになる、とあって、岩波全集版の注にラ・メトリに名前が出てくる。ラ・メトリにはその他に、興味深いことに、風刺書『マキャヴェルリの医師の政策、医者に開かれた出世の道(Politique du médicin de Machiavel ou le chemin de la Fortune ouvert aux médicins)』、哲学書『機械以上の人間(L'Homme plus que Machine)』というものがある。ここに出てくる「マキアヴェッリ」の位置、あるいは「機械以上」というのはどういう意味を持っているのか気になる。
ラ・メトリにとって、自然は第一原因なしに第二原因のみで成り立つ調和の世界である。自然の一切は機械であり、画一的な物質からなりたっている。自然は機械であるとともに職人でもある。というのも、自然は自らを自ら自身によって産出するからである。自然を機械の比喩で捉えれば、必然的にその作り手は誰なのか、機械を動かしているものは何なのかと問わざるを得ず、デカルトにせよニュートンにせよ、その作り手を神に見出してきた。他方ラ・メトリは、自然が作り手なしに働き続ける調和を保っていると考える。

われわれの貧弱な悟性は、粗雑きわまる観察の範囲を出ることなく、原因と結果との間を領している連携を発見できないこと、これは白状しなければいけない。しかし、それは哲学者には永久に知られない一種の調和である。

自然の第一原因あるいは物質の永遠性、これらは人間にとって不可知にとどまっている。しかし、ラ・メトリは知ることのできないものは知らずともよいと断言する。というのも、その不可知の認識をめぐって宗教戦争さえ引き起こされ、たえず争いを生むからである。ラ・メトリいわく、機械論者は寛容である。