'13読書日記25冊目 『物語の哲学』野家啓一

物語の哲学 (岩波現代文庫)

物語の哲学 (岩波現代文庫)

374p
導入部分は歴史哲学を再考/再構築するということなんだけれど、むしろそれはいわば話しのつかみで、筆者の大きな意図としては「物語論」という一種の言語行為論から科学を論じる可能性を問うことにある。そのために、「物語る」とはどういう言語行為なのか、歴史哲学が衰退してしまった今「物語る」という行為からそれを捉え直すことによって何が可能になるのか、といったことが問われている。筆者の卓見の一つは、物語るという言語行為において(物語られる)過去と(それを聞く)現在の共同体の循環を見出す部分だろう。「物語る」という行為において、語り手とテクストの記述者の意図は一致せず、聞き手の能動的な参加と語り手の受動的な媒体(テクストを伝える媒介者)によってテクストの意味論が作られていく(ここまで割と適当なまとめ)。これはなかなか興味深いことだと思うな。その理由は書かないけど。