'13読書日記40冊目 『ルソー・コレクション 政治』ルソー/解説・川出良枝

ルソー・コレクション 政治 (白水iクラシックス)

ルソー・コレクション 政治 (白水iクラシックス)

251p
「コルシカ国制案」、「ポーランド統治論」、川出先生の解説が収録されている。どちらも『社会契約論』を大枠にして、それを実際に一国の国制改革に実践しようとする計画となっている。『社会契約論』のなかでルソーは、特殊意志の部分的な集合から一般意志を顕現させるような法を与える(国制を与える)難題を、神的な能力を持ち道徳的にも優れた立法者へと委託したが、今回は言わばルソーがその立法者の役割を担っているようにみえる。『社会契約論』は俗説によれば、フランス革命に多大な影響を与え、実際その理論のラディカルさは革命にこそふさわしいような気もするが、今回の2つの国制案では、とりわけ「ポーランド統治論」では、改革の視点が際立っている。現行の体制のどの部分を改革すれば(ルソーの言う)自由を体現する体制が出来上がるのか、しかもその際に国民の反発を買い反乱を引き起こすことなく、再びの無政府状態へと帰することなく改革すればいいのかという観点から、ルソーはポーランドの立法案を書くのである。面白いのは、そこでルソーが王の存在が理想の国制に対する妨げになっていることを指摘しながらも、王を一挙に無くしてしまうのではなく、王に自由の国制を妨げさせないシステムをいかに作るか、ということを気にしている点だ。カント的な読み方になるかもしれないが、理念的なものが現実を指導していく際の漸近性が見られるだろう。ルソーの共和主義への改革案には、祖国愛と公共的な卓越、さらにそれだけではなく腐敗を防ぐシステム(例えば頻繁に国会を開くこと、連邦制、代表制)が織り交ぜられていて、単に『社会契約論』を読むだけでは分からなかった彼の現実的な視座が見られて面白い。