'14読書日記12 『経済秩序のストラテジー』キース・トライブ

経済秩序のストラテジー―ドイツ経済思想史1750‐1950 (MINERVA人文・社会科学叢書)

経済秩序のストラテジー―ドイツ経済思想史1750‐1950 (MINERVA人文・社会科学叢書)

ドイツ経済史家の論文集。論文集なのでまとまりがあるわけではなく、前著"governing economy"を読めばよかったと後悔したのだけれど、ドイツの経済思想においていつも問題になっていたのが合理性と秩序(Ordnung)から来ていることを、様々な年代、角度、思想家から論じているという意味では、一貫性がある。「リストの理性」という、それが言いたいだけちゃうんかいとつっこみたくなるような論文もあるが(しかしそれに反して、内容的にはリストの経済思想の源流をアメリカに求めるという比較思想史、横断的な思想史の研究になっていて面白い)、この本の力点は第一次第二次大戦期のドイツの経済思想の把握にある。マックス・ウェーバーオットー・ノイラート、フランツ・ノイマン、オルド学派が個別に論じられており、この方面に疎い僕にとっては面白い読み物になった。最終章「新経済秩序と欧州経済統合」では、トライブはナチズムの「新経済秩序」が実のところ逆説的に「欧州経済統合」と方向性を同じにしているのではないかと論じるのだが、それは多少以上の無理があるような気がする。