'14読書日記14 『中世ヨーロッパの社会観』甚野尚志
- 作者: 甚野尚志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/06/08
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
- 作者: 甚野尚志
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 1992/10
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログ (1件) を見る
中世の隠喩と言っても、古代から引き継がれたものが多いのだが、もちろん名辞とシニフィエ、シニフィアンの関係が古代とは、そして中世内部でも様々に異なっており、それにともなって隠喩の機能も変化していく。例えば、蜜蜂の生体の記述はアリストテレスの『動物誌』、ウェルギリウスの『農耕詩』、プリニウスの『博物誌』などに現れているが、中世の作者らはそれらを利用して、政治的・道徳的な主張を行った。古代において蜜蜂が空高くで生殖を行うことをまだ知らなかったため、蜜蜂は交尾することなく生殖するものとして描かれたため、中世の作者らは蜜蜂を処女性の隠喩として用いた。また、王蜂が針を持たず、働き蜂らが勤勉に労働することは、王が権力・暴力ではなく統治すべきことを、そして臣民が勤勉に忠誠を誓うべきことを示す隠喩となった。あるいは、蜜蜂の蜜から教会の典礼で用いられるろうそくが造られることから、ろうそくのろうは処女から生まれたキリストの四肢に、燈心はキリストの魂に、炎はキリストの神性へと対応付けられて隠喩化される。
建築物、人体、チェスの隠喩についても同様に、隠喩の系譜と変転が辿られ、中性の社会観について勉強になるところが多い。
- 作者: 将基面貴巳
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2013/08/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る