'14読書日記15 『理性への希望――ドイツ啓蒙の思想と図像』ヴェルナー・シュナイダース

理性への希望―ドイツ啓蒙主義の思想と図像 (叢書・ウニベルシタス)

理性への希望―ドイツ啓蒙主義の思想と図像 (叢書・ウニベルシタス)

ヴェルナー・シュナイダースはドイツ啓蒙の第一人者と言ってもよい研究者で、『啓蒙辞典』の編纂などにも従事した。一般にドイツ啓蒙といえば、プーフェンドルフ、ライプニッツ、トマジウス、ヴォルフ(カントまで含めるかは微妙なところ)あたりを指すが、より一般には、え、ドイツ啓蒙ってなに、という感じになるのではないかと思う。スコットランド啓蒙やフランス啓蒙の方が、歴史的な「啓蒙」の知的運動としては有名なのではないか。なにしろ、上にあげた面々の後に続く、カント、フィヒテシェリングヘーゲルといったドイツ観念論者、あるいはロマン主義者の印象が強すぎて、カント以前のドイツの哲学者となると、日本ではあまり手引がない(ライプニッツは別として)。哲学史の教科書には、カントによって打ち倒されたライプニッツ=ヴォルフ流派の講壇哲学Shulphilosophie、という程度の認識しかのっていないこともある。本書は、ライプニッツとカントの間を埋める、ほぼ有象無象と言っていいドイツ啓蒙の哲学者らの目指した「啓蒙」を概説したものである。
特徴的なのは、ドイツ啓蒙の中期(ヴォルフがまだ生きているあたり)くらいまでに哲学書に用いられていた、扉絵の図像を解釈することで、哲学者らの論争を理解しようとするものである。おそらく、哲学書の扉絵として最も有名なものは、ホッブズの『リヴァイアサン』のそれだろう。そして、現代では、図像を利用して大衆に自らの哲学思想を広める文化はほぼ途切れてしまっている(あってもせいぜい馬鹿にされるくらいのものだろう、が例外もいくつか思い当たる)。しかし、18世紀半ばくらいまで、哲学書の扉絵には、筆者が指定した図像が用いられていたのであり、それが自らの思想を簡便に表現するのに好都合だと考えられていたようなのだ。