'14読書日記32冊目 『ザ・フェデラリスト』

ザ・フェデラリスト (岩波文庫)

ザ・フェデラリスト (岩波文庫)

久しく書いていなかったら、書かなきゃという思いがプレッシャーになって、余計に先延ばしにしちゃうという悪循環に陥っていました。
人民にこそ主権があると明言し、それが政治上の成果として結実したのは、このフェデラリストたちのこの論集が史上始めてでした。アメリカ独立戦争以後、諸邦をとりまとめて連邦政府を作る必要を強く訴えるこの論集は、主権概念にも大きな転換をもたらしたのです。憲法制定権力という観点からも、非常に面白い論点があると思います。連合政府は、もともとは独立戦争中に諸邦をとりまとめてイギリスに対峙するための暫定的なもので、各邦には固有の主権がありました。したがって、秘密裏に行われた憲法制定会議で起草された連邦政府について記された憲法に、各邦は批判的でした。戦争中の連合規約を改正して、連邦政府を樹立するということ、このことは一体どういう観点から正当化されるのか。岩波版の翻訳では訳出されていませんが、no. 40(マディソン)によれば、確かに憲法制定会議には連合規約を変更する権限は正当には存在しないが、「形式は実質に譲歩すべきであり、形式への厳格な固執は人民が持つ[政府の廃止と修正の]権利を唯名論的で無意味なものにしてしまうだろう」。つまり、憲法制定会議は各邦によって委託されたものではないので正当な権限をもたないが、その「実質」は――フェデラリストたちが連邦政府樹立の利点としてあげるものですが――こうした権限の欠損を補って余りあるものにする、というわけなのです。