'14読書日記34冊目 『スコットランド啓蒙とはなにか―近代社会の原理―』田中秀夫

田中先生からご恵投いただきました。ありがとうございます。
スコットランド啓蒙の多様な展開が一望できる本となっています。第三代アーガイル公爵、ガーショム・カーマイケル、フランシス・ハチスン、ジョージ・ターンブル、デイヴィッド・ヒュームアダム・スミス、アダム・ファーガスン、トマス・リード、ジョン・ミラーといった顔ぶれが登場します。本書の大きな特色は、やはりそれぞれの思想家のバックボーンである政治的・社会的コンテクストが、とりわけ当時の大学制度についての記述が丁寧に描かれ、それとの偏差や相似からもテクストに分析が加えられているところでしょう。18世紀前半のスコットランドの窮乏、イングランドとの合邦、それへの愛国的反発、合邦による経済的発展、啓蒙知識人と穏健派教会、啓蒙的な貴族と大学人事との結びつき(恩顧)。さらに、スコットランド啓蒙の特色である、自然法と共和主義、富と徳、社会の自然的発展説に加えて、晩期啓蒙としてのモラル・センス学派も取り上げられています。