'15読書日記26冊目 『現代議会主義の精神史的地位』カール・シュミット

現代議会主義の精神史的地位 (みすずライブラリー)

現代議会主義の精神史的地位 (みすずライブラリー)

岩波文庫から樋口陽一訳も出ているが、みすずライブラリー版で読んだ。民主主義は同一性に基づくのであり独裁とも両立する、議会主義は自由主義に淵源を持ち、もはやそれは時代遅れになった――こうした断言は傾聴すべきところも多いが、非常に独断的な面も強い。

政治的平等が絶対的な人間平等に近づけば近づくほど、その領域事態、つまり政治そのものが価値なきものとされ、どうでもよいものとされるのである。かくて、政治的平等の実質が失われ、かかる平等が個々の平等者にとって無価値のものとなるのみならず、かかる実質なき平等を政治の領域でまじめに実現せんとする場合には、政治そのものが、ますますその本質を失うこととなるであろう。[...]しかし実質的な不平等は決して世界からも国家からも消滅しはしない。かえってそれは他の領域、例えば政治的なものから経済的なものへと移行し、この領域に新たな比較にならないほど強力な、重大な意義を与えるであろう。見かけの政治的平等が行われれば、今や実質的不平等が貫徹される他の領域、例えば今日においては、経済的なものが政治を支配することになる。このことは全く免れることができないことであり、国家学的考察からすれば、多くの人の苦情の種となった国家および政治に対する経済的なものの支配の真の理由となるのである。何らかの不平等という相関概念なしに考えられた無差別の平等が人間生活の一領域を事実上捉えている場合には、この領域自体がその実質を失って他の領域の背後に隠れてしまい、今度は代わって全面に現れた領域に不平等が情容赦のない力を持って実現するに至るのである。(第二版序文)