'15読書日記28冊目 『ユートピアと改革』フランコ・ヴェントゥーリ

啓蒙のユートピアと改革―1969年トレヴェリアン講義

啓蒙のユートピアと改革―1969年トレヴェリアン講義

ヨーロッパ諸国間の啓蒙思想の伝播を横軸において大掴みする歴史叙述。フランス啓蒙、イタリア啓蒙、イングランド啓蒙、スペイン、ドイツ、ロシアといった各国において、例えば『社会契約論』が、例えば『犯罪と刑罰』がどのような衝撃を持って読まれ、どのような議論に組み込まれたのか。なかでもやはり、とりわけ第4章「刑罰権」が面白い。ベッカリーアの書物の内奥にあるユートピア思想が、フランスにおいて引き起こす議論とその逆説的な帰結のあらましがダイナミックに描かれる。しかも、章題と裏腹に、議論は共産主義の淵源から説き起こされるのである。