'15読書日記29冊目 『パレード』吉田修一

パレード (幻冬舎文庫)

パレード (幻冬舎文庫)

パレード (幻冬舎文庫)

パレード (幻冬舎文庫)

何度か別の人から薦められていて、ようやく読むことができた。吉田修一は僕の記憶だと『パーク・ライフ』を読んだことがあるくらいで、それはほとんど印象に残らなかった。本作は違う。群像劇が丁寧に描かれるなかで一つの不和というか不安が次第に大きくなっていき――といってもそれはまるで誰も気づかないように静かに延伸し、かといって誰もが気づいているというような具合なのだが――最後にはじけとぶことなく空虚な穴に吸い込まれてしまう。その吸い込まれた穴の縁に立たされることになる。人物ごとに視点を分けて書く手法によって丁寧に組み立てられたストーリーのなかでアンチクライマクスの空虚さと恐ろしさが際立つ。書き分けの手法と一人称の語り口が鼻につく感じもないことはないが、するすると読み進められ、最後にどきりとさせられる。