08読書日記101冊目 「自由を考える 9・11以降の現代思想」東浩紀・大澤真幸
- 作者: 東浩紀,大澤真幸
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2003/05/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本では、13歳年下の東浩紀と対談している。二人ともにとって問題領域なのは自由のあり方である。すなわち、第三者の審級の後退に伴って「自由であれ」という命題が現れたのだが、実際「自由」とは「〜からの」自由であるわけで、その「〜」の部分が失われた現代にあっては、自由のあり方が、むしろ「自由」ではなくなってきているのではないか、ということである。両者は「セキュリティ」の問題について語り合う。そして、そのようなセキュリティを支配する権力をビオス(動物)支配の権力と呼ぶ。そのようなビオスの権力ではテクノロジーが向上すれば、その権力の危険性を論理的に示すことが難しくなる。例えば、住基ネットワークの問題が特徴的だ。そして、そのようなセキュリティ社会、あるいはユビキタス・コンピューティングされた社会においては、「偶有性」が失われつつあるのではないか、というのが大澤真幸の説明である。
面倒くさいから偶有性の議論はしないが、僕はこの偶有性ということが好きで、運命や全体主義、イデオロギーに抗する、そしてしかも大衆、動物、消費社会にも抗する第三の道として偶有性を考えている。それはクンデラ流に言えば、重さに対する軽さである。「軽さ」という概念が示すのは、非常に面白くて、クンデラはキッチュなものに対するものとして「軽さ」を念頭においているのである。
それはともかく、対談自体はかみ合う部分が多く、様々な思想家に言及しつつ、それがとても刺激的であった。この種の対談は不毛なかみ合わなさに陥ることが多いが、この本にいたっては非常に示唆的で議論喚起的である。やっぱ大澤先生おもしろい。
262p
総計29578p