07読書日記6冊目 「狭き門」アンドレ・ジッド


狭き門 (新潮文庫)

狭き門 (新潮文庫)

「力を尽くして狭き門より入れ。滅びにいたる門は大きく、その道は広く、之より入るもの多し。生命にいたる門は狭く、その路は細く、之を見出すもの少なし」


聖書の中の一節をモチーフとした小説。アリサと主人公ジェロームはお互いを高めあい、愛し合うことが至福なのだと思っていた。だが、アリサは自己犠牲でのみ<徳>を積む事ができ、それによって「狭き門」から差し込む眩いばかりの国へ行けるのだと信じる信仰心と、主人公ジェロームを愛する気持ちの間で苦悶し、やがて死に至る。


一人の男を愛し、満たされて幸福だと感じることは、「広く大きな道」を行くことであり、神への愛とは矛盾することになる。しかし、愛する人を遠ざけることによって「入る」事のできるはずの「細き道」は、あまりに切なく、悲しいものである。神のみの与え給えし愛のみを受けて、自らの<徳>を積むことは、愛するものと離れていきながらも、それに対する恋慕の情は抑えることができず、あまりにつらく、悲しい道なのであった。


また、ジッドはアリサにこうも語らせる。「お互いの発展の無いものは、目指すべきものではない」。鋭い道徳史観に裏打ちされた、プロテスタンティズムへの批判。彼が、「狭き門」を執筆した時にはもう気づいていたと言う考え、「人間の終局目的は、神の問題を少しずつ人間の問題に置き換えるにある」は、思わずはっとさせられる言葉である。


250p

総計1689p