'12読書日記37冊目 『神秘主義』アンリ・セルーヤ

神秘主義 (文庫クセジュ 252)

神秘主義 (文庫クセジュ 252)

164p
総計10218p
古本屋でクセジュ文庫を見つけたら買っておけってばっちゃが言ってたから買ったのに・・・。そんなに面白くなかった。僕としてはミスティシズムのなかでも特に啓蒙期以前のピエティスムスとかキエティスムについてもうちょっと解説して欲しかったのだが、比較宗教学的な観点から、宗教の根幹には神秘主義がある、とのこと。筆者は、神との合一、自然を媒介にした神との和解を目指す知性的直観の態度を神秘主義と定義している。
ただ、興味深いのは、筆者が神秘主義者の神秘体験は、言語化することができず、それを体験した本人しか理解されえないとしつつ、同時に神秘主義者から精神病者を区別しようとしている点である。外見的な徴候としては、神秘主義者も神経病者も変わらないのだが、両者を隔てるのは「社会的貢献」の有無、そこへ至る合理的プロセスの有無だというのだ。となると、もはや「神秘体験」みたいなことをわざわざ持ち出す意味がわからない。1950年代後半に書かれた本書において、何が批判意識にあったのか、その社会的コンテクストのほうがむしろ興味深い。